はじめに:パソコンが遅い…それ、仮想メモリの設定で解決できるかも
仕事中にブラウザのタブをいくつも開き、Zoomで会議をしながらExcelを編集していると、突然カーソルがカクついて操作が遅れることがあります。
特にノートパソコンは搭載メモリが少なく、メモリ不足が顕著に現れやすいです。
そんなときに見落とされがちなのが「仮想メモリ」の設定です。
仮想メモリは Windows が物理メモリ(RAM)を補うために SSD や HDD を一時的にメモリ領域として使用する仕組みで、状況に合わせて調整することで体感速度が改善するケースも少なくありません。
本記事では Windows 11 を中心に、仮想メモリを最適化してパソコンの動作を高速化する方法を詳しく解説します。
仮想メモリとは? 不足すると起きるトラブル
仮想メモリは Windows が RAM の延長線として利用する「ページファイル」と呼ばれる領域を指します。
物理メモリが不足すると、OS は使用頻度の低いデータを SSD や HDD 上のページファイルに退避させます。
この仕組み自体は便利ですが、退避・読み出しにはストレージの速度が絡むため、メモリ不足の状態が続いたり、環境に合っていない設定になっていると、かえってパフォーマンスが低下することがあります。
代表的な症状の例
- アプリの起動や切り替えが極端に遅くなる
- ファイルコピー中にマウスがカクカクする・フリーズする
- 動画編集ソフトや画像編集ソフトがよく固まる
- ディスク使用率が 100% に張り付いたままになる
こういった症状が出ている場合は、「メモリ不足+ページファイル多用」が影響している可能性があります。
原因・背景:メモリ不足が発生する仕組み
メモリ不足は主に次のような要因で発生します。
- ブラウザ(Chrome など)のタブを大量に開いている
- Chrome や Edge は内部で多数のプロセスを生成します。
- タブ数が増えるほど、バックグラウンドでもメモリを使い続けます。
- Photoshop や DaVinci Resolve など、クリエイティブ系ソフトの利用
- 画像・動画編集ソフトはキャッシュや一時ファイルを大量に保持します。
- 8GB 以下のメモリ環境では、すぐに物理メモリが一杯になりやすいです。
- Windows 11 標準のバックグラウンドサービス
- OneDrive の同期、ウイルス対策、各種常駐ソフトなどが
何もしていないように見えてもメモリを消費します。
- OneDrive の同期、ウイルス対策、各種常駐ソフトなどが
これらが重なると物理メモリが飽和に近づき、OS はページファイルへの書き出しを頻繁に行います。
ページファイルへのアクセスが増えすぎると、ストレージへの負荷がボトルネックとなり、動作が極端に遅くなることがあります。
解決策・手順:Windows 11 での仮想メモリ設定方法
ここからは、Windows 11 で仮想メモリを確認・調整する手順を紹介します。
ステップ1:現在の仮想メモリサイズを確認する
- スタートボタンを右クリックし、「システム」を開きます。
- 右側または下部の「関連リンク」内にある「システムの詳細設定」をクリックします。
- 「システムのプロパティ」が開いたら、[詳細設定]タブを選択します。
- 「パフォーマンス」欄の「設定」ボタンをクリックします。
- 開いたウィンドウで再度[詳細設定]タブを開き、「仮想メモリ」欄の「変更」ボタンを押します。
ここで、現在のページファイルサイズと保存先ドライブを確認できます。
ステップ2:自動管理をオフにし、カスタムサイズを設定する
- 「すべてのドライブのページングファイルのサイズを自動的に管理する」のチェックを外します。
- 仮想メモリを設定したいドライブ(通常は C ドライブ)を選び、「カスタムサイズ」を選択します。
- 「初期サイズ」と「最大サイズ」に数値を入力します。
目安としては、次のような設定がバランスが良いとされています。
- 初期サイズ:物理メモリ容量の 1.5 倍
- 最大サイズ:物理メモリ容量の 2 倍
例:8GB メモリ搭載の場合
- 初期サイズ:12,288 MB(約 12GB)
- 最大サイズ:16,384 MB(約 16GB)
あくまで一例なので、実際の使用状況(使うソフト・空き容量)に応じて調整してください。
ステップ3:高速 SSD をページファイル用ドライブにする
可能であれば、NVMe SSD を搭載した C ドライブ にページファイルを置くのがおすすめです。
- SSD は HDD に比べてランダムアクセスが高速なため、
ページファイルの読み書きによる待ち時間が短くなります。 - HDD しかない環境では、システムドライブと別ドライブに置く方法もありますが、
どちらにしても SSD への換装が最も効果的 です。
ステップ4:再起動して設定を反映する
「OK」ボタンで設定を確定すると、Windows から再起動を促されます。
- すべてのウィンドウを閉じて再起動します。
- 再起動後、タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)を開き、
- 「メモリ」
- 「ディスク」
の使用率を確認します。
高負荷の作業をしたときに、
- ディスク使用率が常に 100% に張り付かなくなる
- マウスカーソルのカクつきが減る
といった変化があれば、設定は一定の効果が出ていると考えられます。
補足情報:最適なサイズの目安と注意点
自動管理のままで良いケースがほとんど
Microsoft 公式の案内では、基本的には 「自動設定で十分」 とされています。
実際、メモリ 16GB 以上の比較的新しいパソコンで、一般的な事務用途だけなら自動設定のまま問題ないケースが多いです。
ただし、インフォムでの修理・相談事例では、
- 8GB 以下のメモリで動画編集ソフトや CAD を使う
- 同時に多くのアプリを立ち上げて作業する
といった ヘビーな使い方をしている環境では、手動設定で改善した例 もあります。
サイズを大きくし過ぎるリスク
最大サイズをむやみに大きくし過ぎると、次のような問題が出ることがあります。
- SSD の空き容量が減り、Windows Update やアプリの更新が失敗しやすくなる
- 書き込み量が増えすぎて、理論上は SSD の総書き込み量(TBW)が早く消費される可能性がある
とはいえ、一般的な家庭・事務用途で仮想メモリを少し増やした程度で、
すぐに SSD がダメになるようなケースは多くありません。
「空き容量を 20~30% 程度は確保する」「書き込みの多い重作業が常に続く環境では SSD の健康状態をたまにチェックする」
といった基本を押さえておけば、過度に心配し過ぎる必要はありません。
状態確認はタスクマネージャーで十分
仮想メモリを調整したあと、
- どの程度メモリに余裕があるか
- ディスクアクセスが減っているか
を確認したい場合は、タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブを見るだけでも十分です。
- 「メモリ」のグラフが常時 80~90% を超えていないか
- 「ディスク」のグラフが長時間 100% で張り付いていないか
こうした指標を定期的にチェックし、
あまりにも使用率が高止まりするようなら メモリ増設も含めて検討 しましょう。
費用・時間・データ保護の観点
仮想メモリ設定の変更自体はソフトウェア操作なので、費用はかかりません。
ただし、
- SSD が古く書き込み速度が遅い
- SSD / HDD の空き容量がほとんどない
といった場合は、SSD の換装や容量アップ が必要になることもあります。
一般的な目安
- SSD 換装費用:1万円台〜(容量・グレードにより変動)
- 作業時間:90分程度が目安
- データクローン・バックアップを含めると、半日ほど余裕があると安心
大切なデータがある場合は、事前に外付け HDD やクラウドへのバックアップを必ず取り、
BitLocker 等の暗号化が有効なドライブは、あらかじめ解除しておくとトラブルを減らせます。
インフォムPCができるサポート
インフォムPCサービス(https://infompc.com)では、仮想メモリ設定を含む パフォーマンスチューニング全般 や SSD 換装 を承っています。
- 遠隔操作による仮想メモリ設定の確認・調整
- 店頭持ち込みでの SSD 換装・メモリ増設
- 作業前後のベンチマーク計測や、データ保護手順の標準化
などを行っており、初めての方でも安心してご相談いただけます。
費用は症状や部品構成によって変動しますが、
診断 → お見積り → ご承諾後に作業開始 という流れですので、
「まずは相談だけ」という段階でもお気軽にお問い合わせください。
まとめ:適切な仮想メモリ設定で快適な PC ライフを
パソコンが遅いと感じたとき、多くの人は
- 不要アプリの削除
- ディスククリーンアップ
を思い浮かべますが、仮想メモリ設定の見直しは即効性が高く、しかも無料でできる改善策 です。
Windows 11 では自動管理がかなり優秀になっていますが、
- メモリ容量が少ないノートパソコン
- 動画編集・画像編集・CAD など重いアプリを使う環境
では、状況に応じて手動設定がプラスに働くこともあります。
物理メモリを増設する前に、まずは本記事の手順で仮想メモリを確認・最適化してみてください。
その上で、タスクマネージャーでメモリとディスクの使用状況を定期的にチェックし、
快適な PC 環境を維持していきましょう。